2.部会標準化活動

2.1 データプロジェクタ部会

部会長 内田健治

平成11年度の活動成果

データプロジェクタ部会では液晶プロジェクタに関する下記のとおりガイドラインを制定しました。

@「液晶プロジェクタ 性能表記ガイドライン」改訂版

A「液晶プロジェクタの測定方法・測定条件に関するガイドライン」

これらのガイドラインの狙いやポイントについて紹介します。

(1)制定のねらい 

 液晶プロジェクタはコンピュータと接続し、画像を拡大投写するプレゼンテーション用機器として近年、急速に普及し、市場が拡大しています。

 しかし、液晶プロジェクタのカタログへの性能表記や明るさ、コントラストなどの測定方法・測定条件等にはこれまで業界で統一した基準がなく、各社の独自規格に依存していました。このため、お客様が製品を選定する際、性能を公平に比較できない場合があるとの懸念から、平成10年3月に「性能表記ガイドライン」を制定しました。平成11年6月には、その改正版の発行と「液晶プロジェクタの測定方法・測定条件に関するガイドライン」を制定しました。

この二つのガイドラインは液晶プロジェクタを対象に定めましたが、ILA、DMD等のデバイスを用いたプロジェクタにも適用できるよう考慮しました。

(2)「性能表記ガイドライン」の主なポイント

 カタログや取扱説明書の性能表記の仕方を業界で統一することを目的として発行しました。

 このガイドラインの作成にあたり、参加会社のカタログに記載されている性能表記一覧表の項目・内容を類似項目毎にまとめる作業から始めました。お客様にとって、分かりやすく、誤解をまねかない表記について論議を重ね、結果として、プロジェクタの性能を表す基本的な項目として光学方式、液晶パネルの画素数、明るさ、コントラスト比、表示可能解像度、アナログRGB入出力など二十数項目について以下の例のように表記用語、表記方法などを定めました。

制定にあたり、特に留意した事項・内容をあげてみますと

@用語・記述方法などについてはガイドラインの目的を損なわない範囲で柔軟性を持たせました。

A液晶パネルのサイズ、画面サイズは「」、「インチ」、「型」などが使用されていた。本来なら国際規格であるSI単位(メートル)にすることが望ましいが、却って混乱するということで「型」、「形」を使用することに決めました。

B「投射」、「投写」、「投映」、「投影」とメーカによって使用している用語が異なっていたのを、プロジェクタは光を投写して画像(映像)を写す、または映すという理由で「投写」と「投映」の2用語に絞りました。

C明るさの表記については、ルックスを採用したり、ANSIルーメンを採用したりするメーカがあったが、海外でも多くのところが採用していて、現在最も客観的に比較できるANSI規格であるANSIルーメンを採用しました。

D対応走査周波数は解像度別に表記するのが望ましいが、表記量が多くなり一覧表への記載が難しいので必要であれば別途記載することとしました。

Eプロジェクタの解像度は、ユーザが製品を選択するときの重要な要素の一つであるため誤解を与えないような表記が望ましい。一方、画素数が固定された(固定解像度)液晶パネルに異なる解像度の画像を表示する技術(リサイジング)は、各社の大きな差別化技術であることから両方を分かりやすく記述することとしました。

Fコントラスト比および周辺照度比は、画像品位を表現する重要な性能表記事項であるが、測定環境、測定条件のわずかな差異により大きく変動しやすいのでANSI規格にこだわらず測定再現性が高い方法を採用しました。

例:性能表記一覧表

液晶パネル

サイズ

記載事項

サイズ(型)と枚数ならびにアスペクト比を記載する3)

記述例

1.3型x3(枚)、アスペクト比4:3

駆動方式

液晶パネルの素子形成、駆動素子、駆動方式を記載する

ポリシリコンTFTアクティブマトリクス

画素数

一枚の画素数、枚数、総画素数を記載する

480,000画素(800x600)x3枚  

総画素数1,440,000

配列

画素の配列方式を記載する

ストライプ

 

(3)「液晶プロジェクタの測定方法・測定条件に関するガイドライン」の主なポイント

 性能表記ガイドライン作成の際、問題提起されながらも時間的制約などのため今後の検討課題として残されたものがいくつかありました。そのうち、最も重要であったのが測定方法・条件の統一化でした。そこで、平成10年4月から作業を始め、プロジェクタの性能のうち、ユーザが商品を選択する場合に重要視する項目で、さらに測定方法や測定条件の違いにより数値の変動が比較的大きい「明るさ」「コントラスト」「周辺照度比」「騒音」の4つの項目について測定方法、測定条件さらには記載条件まで定めたガイドラインを平成11年6月に制定しました。

 留意点をあげてみますと

@測定する部屋の環境条件、プロジェクタ本体のセッティング条件、測定信号、測定器など種々の測定条件を定めました。

A海外メーカにも働きかけができるよう出来るだけANSI規格(ANISI/NAPM IT7.228-1997)に準拠するようにした。しかし、測定結果の再現性や生産工程での具現化などを重視したため、ANSI規格とは異なる測定方法も一部採用しました。

Bコントラストの測定方法についてはANSIで規定するテストパターン(チェッカーフラグ)では僅かな測定環境・条件の違いによる誤差が大きすぎることが懸念されたため全白/全黒パターンによる測定方法を採用した。

C「騒音」の測定方法については大半のメーカがJIS規格(JIS 8731)を採用していたが、JIS 8731は機器が発生する騒音を規程したものではない点や、海外メーカへの適用も考慮してISO規格(ISO 7779)に準拠することとした。さらに、プレゼンテーション用途ではプロジェクタを通常テーブルの上に置いて使用することが多いのでISO 7779Sound pressure level at bystander position を採用し、測定台についても規程しました。また、測定値についてはアイドリング状態とすべての作動状態ごとの平均値を求め、その最大値をとることとしました。

Dカタログへの記載条件を下記のように定めました。

a) カタログ等への記載の基準と条件

  ・「明るさ」「コントラスト」「周辺照度比」「騒音」は、メーカ出荷時の平均値をカタログに記載する。

  ・「明るさ」「コントラスト」「周辺照度比」のメーカ出荷時の下限値は、カタログ値の80%を限度とする。

b) カタログ等への統一表記

 旧モデルと本ガイドラインを適用したモデルの区分けをユーザが容易にできるように、カタログの性能表記の「明るさ」「コントラスト」「周辺照度比」「騒音」の項目に以下の注釈文をつけることとしました。

注釈文:「出荷時における本製品全体の平均的な値を示しており、社団法人日本事務機械工業会で定めた液晶プロジェクタの測定方法・測定条件に関するガイドライン(1999年6月)に基づいています。

なお、ガイドラインの国内での運用は、平成11年10月1日以降発売の新製品から適用することとしています。

(4)ガイドラインのもつ拘束性

 両ガイドラインとも強制力はないものの、部会参加メーカの責任において最大限に尊重するとともに、参加していないメーカにも積極的に適用を呼びかけていくつもりです。

 なお、平成11年9月現在の部会参加メーカは、三洋電機エイヴイシステム、三洋電機、シャープ、セイコーエプソン、ソニー、東芝、日本電気、日本電気ホームエレクトロニクス、日本ビクター、日立製作所、富士写真フイルム、富士ゼロックス、富士通、松下電器産業、三菱電機の15社です。

(5)今後の課題

 「液晶プロジェクタの測定方法・測定条件に関するガイドライン」は当面国内を対象としていますが、海外メーカへの採用を働きかける一助として、INFOCOMM(世界最大のプレゼンテーション機器、プロジェクタのショーで米国、欧州、シンガポールで開催、日本ではINFOCOMM Japan20002月に開催)を主催する米国のICIA(International Communications Industries Association, Inc)と本ガイドラインをベースに世界共通ガイドラインとするよう調整作業を進めています。また、部会の今後のテーマとして「ガイドラインの遵守に関する活動」を取り上げていく予定です。

(6)ガイドラインの入手方法

 「液晶プロジェクタ 性能表記ガイドライン」および「液晶プロジェクタ 測定方法・測定条件に関するガイドライン」はJBMAのホームページ(http://www.jbma.or.jp)に掲載しています。
以上