アンケートの結果をみると、紙マニュアルが必要と回答している人は74%をしめ、現状では紙マニュアルを必要と感じている人がかなり多いことがわかった。
ここでは、アンケートのコメントから紙マニュアルの良さ、電子マニュアルの問題点を上げ、今後電子マニュアルに移行する際のの提案を行う。
紙マニュアルの良さについてアンケートのコメントをまとめると以下のようになる。
・電子マニュアルを参照する場合、参照するための機器、ソフトウエア(Viewer)がないと参照できない。紙マニュアルは、マニュアルさえあれば、どこにいても参照することができる。
・電子マニュアルを参照する場合、参照するための機器の操作(パソコン、ソフトウエアの起動)が必要だが、紙マニュアルはこれらの操作を必要としないため、簡単になおかつすぐに参照することができる。
・マニュアル全体に目を通したり、概要を把握したり、目的の個所をさがす場合は、紙マニュアルの方がやりやすい。
・紙マニュアルは、書き込みができたり、付箋を付けたりユーザの使いやすいように変更することが可能。
上記の「紙マニュアルの良さ」から、現状の電子マニュアルの問題点と3つの項目にまとめることができる。
●電子マニュアルを参照するための環境(機器)
電子マニュアルを参照する為には、参照する為の機器が必要となることが問題である。
但し、背景としては、電子マニュアルを参照するための機器としてパソコンが一般的だが、情報機器が普及し、ネットワーク環境を含めた情報インフラが整備されてきたとは言え、紙マニュアルと同等にどこにいてもすぐ見られる環境になっていないことを考慮しなければならない。
また、パソコン等の参照機器の操作がわずらわしいことも問題であるといえる。
●電子マニュアルの構成と参照ソフトウエアの機能
電子マニュアルのを参照する際、CRTのサイズ、ページめくりのスピードなどにより、一定時間に表示される情報量が紙マニュアルに比べ情報量が少ないことが問題点としてあげられる。
また、目的の場所を探す際は、電子マニュアルに検索機能を使用するが、検索機能が十分でないため、目的の個所を見つけること難しいようである。探す方法、慣れなどの人間的な問題も有るが、マニュアルの内容、構成が目的の個所を探しにくい構成になっている可能性がある。
●電子マニュアルのカスタマイズ機能
Viewerの機能になるのかもしれないが、電子マニュアルは、書き込みなどのユーザごとに使いやすい形にするカスタマイズの機能がついていないことが問題点であるといえる。
書き込みなどを行うことができないので、最初にマニュアルを提供されてから使いやすくなっていくことはない。最初に提供されたときのマニュアルの完成度がユーザーの使い勝手に大きく影響するため、電子マニュアルは、紙マニュアルに比べてより完成度の高いものを作成する必要があると思われる。
マニュアルという性質上、設定、トラブル対応など単純にマニュアルを読むだけで、目的を達成するわけではなく、マニュアルを見てからの作業を行うことが最終目的である。
単純に、いったん読んだら終わるような利用目的のドキュメント(論文、読み物)ならば電子マニュアルでもよいかもとは思うが、マニュアルのように作業を目的としたドキュメントにおいては、現状では紙の方が使いやすく、単純に電子マニュアルを紙マニュアルの代替えとして使用することは困難である。
今回のアンケートであがった電子マニュアルの使用上の問題点を解決するためには、電子マニュアル自体の改善(内容、構成の見直し)を行うことはもちろんであるが、参照する機器等の環境に依存する部分が多い。
製品の初期設定、トラブル対応などを製品の置いてある場所に行かなくてもネットワーク経由で自分のパソコンから作業が行えるようになる、製品の電源を入れるだけで、サーバから初期設定を読み込み自動的に設定するなどの製品自体の機能の向上や携帯しやすい参照するための機器、カスタマイズ機能の充実したViewerなどの製品が出ないと解決できない点が多分にある。
このため、電子マニュアルを紙マニュアルの代替えとしようとしたときには、これらのマニュアルを参照するための製品の動向、やユーザの使用環境を充分に考慮を行い切換え時期を判断しなければならない。
電子マニュアルの問題点ごとに紙マニュアルが必要な理由をの回答例を上げる。
●電子マニュアルを参照するための環境(機器)
・パソコンがないとき。
・どうしても必要というわけではないが、「ちょっとあれを見たい」というときに紙マニュアルだとすぐに見られると思う。
・電子マニュアルが読めないとき(設置時、トラブル時、CD-ROMなど装置がない)
・持ち出して何処でも外出時の電車の中で等すぐ見れる。
・とらぶったときにPCが使えるとは限らない。必ずしも電子マニュアルは使いやくない。
・パッと見て探すという意味で、CD−Rを入れたり出したり、データを読み込む手間、探す手間が紙マニュアルの方がかからない
ので。
・本体PC周辺機器は、PC本体の電源を落としてからつなげるようになっているのにPCを立ち上げなくては見れないマニュアルは要らない。必要なのは機器設置時及びトラブル時に必要
・即時性。ツールを利用しなければならないの不便。
・電子マニュアルを参照するためのハード機器PCが故障した時や携帯不可能な紙マニュアルは使用する場所をえらばないので便利
・電子マニュアルには再生装置(パソコンなど)が必要。ユーザーによっては、再生装置がない場合がある。
●電子マニュアルの構成と参照ソフトウエアの検索機能
・紙マニュアルのほうが短時間で調べられる
・どんな情報が載っているか把握したいとき
・素早く、必要な説明内容が解かる。
・インターネットなどでタイムリーに対応されない限り、コンピューターなどのボキャブラリーが乏しい初心者ユーザーには検索が難しく、紙マニュアルの方が検索が早く済み簡潔なため、紙マニュアルが必要。
・キーワードがわからなくても、パラパラめくって見つけることができる。
・○○○をしたいと思って参照するときには目次を見てペラペラめくれる紙マニュアルのほうが探しやすい(図と標題で何となく内容がわかるので)。また、製品概要をザッと理解したいときも紙マニュアルのほうがすばやくわかると思う。
・CD-ROMでは一覧性に乏しく、参照しずらい
・本のイメージでザーとページをめくり興味のあるところ電子マニュアルだと1画面づつ表示させてから確認になるのでめんどうと感じる
・電子マニュアルだと検索を一から順にすすめる必要があり、かえって面倒である
・目次があるし、全体的な姿を見ることが容易にできるから。
●電子マニュアルのカスタマイズ機能
・2箇所を同時に見たいとき、ポストイットなどで印をつけておいたり、手でつまんだりできるから。
・よく開く個所に癖がついて、アクセスしやすくなる。
・参照したページでメモ等を書き込みたい場合がある為必要
・紙マニュアルには学習効果がある。