Office EquipmentStandard

標準化の新規分野及び課題

オフィス機器の標準化課題

JBMIA 標準化センター
2003.12.03

1. 進め方

1.1 標準化ロードマップの目的

業界で必要性の高いオフィス機器の標準化課題を選定し、標準化のロードマップを作成する

オフィス機器は日本の機器生産の占有率が高く、国際的に市場をリードしてきた。しかし業界を取り巻く環境は、情報化、ネットワーク化などを軸に大きく変化をしてきており、業界を越えた競争や協調関係が出てきており、標準化についても新たなパラダイムが要求されている。関連する業界の規格が直接オフィス機器と相互に影響を及ぼすようになり、規格に境界がなくなりつつある。一方で、対象となる規格も対象範囲が非常に広くなりかつ数も多くなっており、それらが相互に影響しあう事態になっている。
こうした中で、ユーザと業界にとってどのような規格が望まれているのか、そして規格を作る上で関連する業界や国際的な協調を取り、またはいかにイニシアティブをとっていけばよいのかが大きな課題となっている。
今回のロードマップは、そのような環境変化を把握し、標準化課題の整理を行い、必要な標準化活動を促進するための作業計画作りを目指す。

1.2 ロードマップ作成のステップ


・標準化戦略の枠組みに基づき課題を具体的に検討する
  環境の整理
  課題の整理
・課題の中の優先順位を検討する
  (この段階で専門委員のコメントを求める)
・アクションアイテムの作成

2.標準化課題を取り巻く環境

2.1 画像関連の標準化

画像関係の標準化は、オフィス機器の中でも重要な課題であり従来から中心のひとつである。この分野の課題は、高画質化・カラー化が急速に進んだことによる画質の測定に関する課題とユーザがカラープリンタを用いたときのプリンタ間の色や、ディスプレイとの色の差をできるだけなくすこと、プリンタプロセスや解像度などによる画質の差をそろえることなどである。

また、他の業界で使われている規格への対応が要求されている。例えばデジタルスチルカメラのプリンタ出力や印刷情報のプリンタ出力において規格間の連携を考慮してより高画質を実現する要求がでている。一方、デジタル技術をもちいて画像の付加価値を高めることの要求がでてきており対応が求められている。 画像関連の標準化は、業界単位、国単位で標準化のイニシアティブを獲得する競争が行われており、これらの組織との関係の中でより効果的で有効な規格作りが求められている。

 画像関連の標準化課題を整理すると、以下になる。
@ 画質関連

画質測定
カラーマネジメント
イメージマネジメント
A 画像データ
B 画像付加価値情報

2.2 ハードウェア関連の課題

ハードウェアは安い生産コストを求めて中国などへの生産拠点の海外シフトが本格化しており、この業界でもすでに50%を越える海外生産比率となっている。 収益率の高いオフィス機器の市場に対して、移行先の国がこうした付加価値の高い機器に対して戦略的に自主開発促進をすすめていくことは考えられるシナリオである(注1)。相対的な日本の技術的な地位の低下を考慮した長期的なビジネス戦略、標準化戦略が必要である。

そのためには、日本としては開発が先行しており、簡単にはキャッチアップできない次世代ハードウェアの開発で重点的にリードして行く必要がある。アクセシビリティを考慮したユーザインタフェースや、新規機能として大容量メモリの搭載、情報家電や携帯など日本が先行する分野と連携する新規製品例えば電子ペーパなどの分野で先行して標準化を進めることが重要である。

注1) 中国は二輪自動車産業の日本からの進出に対して合弁の条件の一つとして,研究・開発能力を持つことを義務付け始めた。そのため日本企業は中国での研究開発センターを作ることを余儀なくされている。これは中国が国家戦略として将来の自動車産業の育成を目指したものといわれている。

2.3 新規サービスの開発

新規ビジネスモデルとして,コンテンツサービスやソフトウェアの高度化がこの業界でも期待されている。インターネットを用いたサービスがその核になると考えられているが,JBMIAではそのインフラとなるインタフェースの標準化(BMLinkS)を進めてきており(注2)、この分野では他の規格化より数年先行しており、デファクトになる可能性が高い。BMLinkSについては相互接続試験が済み商品化が進んでいるが,さらに高度な新規サービスを可能とする新たな標準化課題の必要性が浮上している。

米国はパソコンやインターネットの標準化について,デファクトスタンダード優位の戦略を政府主導で強力に推進している。そのため,インターネットビジネスに関して米国の圧倒的な優位性は今後も継続し、日本が技術面、ビジネス面で国際的なリーダーシップをとれる可能性はきわめて限定的な部分に絞られるといわざるを得ない。

一方EUにおいては,The Sixth Framework Programme (FP6)の中のIST(Information Society Technology) などの共同研究開発プロジェクトをEU主導で推進しており、その成果を国際標準として提案する情報技術戦略を進めている(注3)。

こうした中で,JBMIAは次世代オフィスのコンセプトとして,「ユビキタスコラボレーション」を提案している。そのコンセプトを実現するものとして,新規サービスモデルを検討していく必要がある。

注2) BMLinkSのスタート時には,業界はハードウェアからソフトウェア,サービス中心に移行する必要があるという指摘はあったものの,具体的に何も手を打っていなかった。そこで次のような方針の下に,プロジェクトを進めることにした。
・パソコンとは一線を画したOA機器の側からのアプローチをとる必要がある
・そのアプローチは,OA機器の接続性・インタフェースが重要なファクターになる
・日本が規格面で主導権をとらない限り,情報はこれまで通り米国に集中する流れが続き,日本にはハードウェアしか残らなくなるおそれがある
・その結果日本にはビジネスチャンスも発生しにくくなる

注3) IST(Information Society Technology) The Sixth Framework Programme(2002-2006) の中のInformation SocietyのRDTプロジェクトなど

事務機業界は,複写機のメンテナンスサービスを軸としたビジネスモデルが成功した業界である。さらにこのモデルを展開する形でトナーカートリッジ、インクカートリッジを軸としたビジネスモデルを作り上げてきた。一方で従来のメンテナンスをより充実する形の遠隔故障診断・遠隔操作についても各社で開発が進められている。

IECではAV機器を対象にリモートダイアグノーシスのミドルウェアの標準化の検討を開始した。これによりネットワーク接続された機器の故障診断を適切に行うための情報提供が可能となる。事務機業界にも同様の要求が行われる可能性が今後高くなろう。

2.4 環境、ユーザサービス

事務機業界は、複写機・プリンタを中心にトナーやインクカートリッジなどサプライの供給を軸としたビジネスモデルを作り上げた。これはオフィス機器そのものの供給に 現在、EUを中心として、サプライ関連の標準化要求が始まっている。トナーカートリッジの試験方法の標準化(注4)は、ユーザがトナーカートリッジを選択する際の基準となる情報を提供することを目的としている。今後、カラーに展開される。写真画像の保存性やについての規格も審議が予定されており、これはインクジェットのみならずプロセスによらず適用されていく予定である。

注4) Method for the determination of toner cartridge yield for monochromatic electrophotographic printers and multi-function devices that may contain printer components

3. 標準化の課題

3.1画像関連

機器の高画質化、カラー出力機器の普及にともない総合的な画質に関する測定法の標準化の要求が急がれている。特にカラー画質の評価方法については、米国が印刷業界を中心にリーダーシップをとろうとしており、それに対応するために早期の枠組みの検討と標準化のロードマップ作りが求められている。

カラーマネジメント全体の標準化に関しては、IEC/TC100による業界横断的な標準化が実現したが、異なる出力デバイス間、プリンタ間の色差など、個々の機器ごとにカラーマネジメントを実装に関しては、業界単位での活動が必要とされる。

@ 画像関連の標準化課題

オフィス文書はカラー化が進みプリントされた場合のプリンタごとの色の差やプロセスの差、ディスプレイやプロジェクタとの色差などにも関心が向けられている。
 また、高画質の要素として異なる機種間の画質について、たとえばレーザープリンタとインクジェットプリンタで異なる解像度の出力の間での文字の太さや画像の濃淡などについても視覚的な差をなくすような努力が続けられている。これには画質に関する測定法の確立が必要とされている。

カラー画像の総合的な画質を評価するための標準化の枠組みに関する検討が、日本と米国を中心に始まっておりSC28の活動と協調して行われている。
物理測定と見た目に関しての課題についてカラー画像を含めて課題を整理が行われた。主な課題はこの活動で扱われており、画像品質関連の13660を統合し、part1はモノクロ、part2はカラーとして進めることになった。
ISO/IEC 13660 Addendum
System Compliance Test Chart and Banding
ISO/IEC 13660 Addendum
Measurement of Image Quality Attributes for Hardcopy Output - Large Area Color Images
見た目の色に関する画質の規格提案もすすめられており19751を統合整理し再度NP提案をすることになった。
ISO 19751 Appearance-based Image Quality Standards for Printer Systems

画質に関しては、オフィス機器分野だけでなく、印刷、写真などをはじめ画像関連の業界がそれぞれ独自の活動をしており、今後デジタル画質評価全体の枠組みが必要とされるとともに、オフィス文書に特定したものとの切り分けされたロードマップ作りが重要な課題である。

画質測定
 SC28/PICS
 主観評価に相関のある画質属性の体系化と測定法
「モノクロ・カラー画質測定法」
「プリンタ画質測定法」
「光沢均一性測定法」
カラーマネジメント
  CIE div8、IEC TC100
 機器間、時間軸による色差を小さくする。
「プリンタ間の見た目の色」
「オフィス標準光源」
「プロジェクタとプリンタ間の見た目の色」
「カラープリンティング用語」
イメージマネジメント
 n:nのスキャナ・プリンタ、プロジェクタ間の画質をそろえる
「スキャナ・プリンタシステム間の画像配置」
「プリンタ・プロジェクタ間の画像配置」
「白黒二値画像の2次元的な画像配置」

画質測定の標準化では、実情にそぐわない規格提案等により産業界に不利益が生じるのを未然に防止することが重要である。(以前ISO/IEC/JTC1/SC28にて問題となった複写機用チャートの規格化提案で問題となった)

カラーマネジメントは、各社プリンタを混在して使用されている一般オフィスにおいて、各社のプリンタ間の色の見えの違いを低減する具体的な手段を提供する必要が出てきている。これに対し、業界標準色再現モード(仮称)およびこれを各社プリンタに実装する方法として、ICCプロファイル、BMLinkSもしくはその組み合わせを候補として検討を始めている。業界標準色再現モード(仮称)と各社推奨色再現モード(ディフォルト)の位置づけを明確化する方策も合わせて検討する。これらはCIE TC8-03 “Gamut Mapping”およびJCIE TC8-03の活動と計画/作業両面での連携を取りながら進めて行く必要がある。

PCプロジェクタで表示された画像とそのプリント画像の間には色の違いや画像の欠落等の差が生じることがある。スキャナとプリンタの組み合わせを変えると、得られるハードコピーの色、画像の寸法/形状や文字/線の太さが変わってしまう。これ等は個別の企業で解決できる問題ではなく、業界でのルールや基準作りが必須であり早急に取り組む必要がある。

色彩用語は業界内外で通用するような統一されたものが無く、関係各方面から色彩用語をまとめることに対する要望が出ているが、CIE、ICC、ISO等でも色彩用語集の作成について、それぞれ個別に動きがあることから、これら外部の動きと連携を取りながら対応していく必要がある。

画像情報については、画像出力に用いられる属性だけでなく、画像処理のための属性やセキュリティ、メタデータの応用など、今後付加価値情報の役割が期待されている。

A 画像データの課題

デジタル機器の普及により画像データの流通性が向上した結果、機器やジャンルを超える利用が増え、業界単位の活動だけでは支障をきたしている。具体的には、印刷用のデータ、デジタルカメラ用のデータだけでなく、今後デジタルTV、携帯電話、電子ブックなどのデータにも高画質で対応していくことが要求され、それらのデータは、業界ごとにそれぞれ作られている。

様々なデジタル機器から生成されるデータのプリントアウト品質の要求に応えるには、業界としてのガイドラインを示すなどの活動が必要である。

TC130の印刷データの標準化PDF-x
ISO TC 42/WG 18(Electric Still Imaging)
工業会標準(CIPA, JEITA)
DCF, Exifと次世代フォーマット
その他の画像フォーマットデジタルTV、D-VCR系フォーマット、電子ブック系フォーマット、携帯電話系フォーマット

B 画像付加情報の課題

画像情報については、画像出力に用いられる属性だけでなく、画像処理のための属性やセキュリティ、メタデータの応用など、今後付加価値情報の役割が期待されている。
画像情報の処理用にはこれまで多くのプロファイルの提案があるがこれを整理・拡張しマルチモーダル画像への適応性の向上を図る。 また、情報アクセシビリティ、セキュリティ、課金などの管理が可能になるように拡張をする。
さらにウォーターマークや二次元バーコードの利用を考慮しトレーサビリティなどのアプリケーションやサプライ管理などの標準化が期待される。

印刷応用データ 「画像プロファイル」 ・カラー印刷用、動画印刷用、OCR用…
・デジタルカメラ対応、携帯対応、PDA対応
ジョブチケット
ICCプロファイル、IPPプロファイル など
画像付加情報 「画像附加情報プロファイル」 リンク情報、メタデータ など (例:地図ソフトなどアプリソフトとの情報リンク)
画像セキュリティ 「小容量画像フォーマット」 顔のアルゴ非依存認識パスポートへのバイオメトリクス要求
その他 「ウォーターマーク」
「二次元バーコード」
セキュリティ関連
機器情報管理
課金情報
コピー制限
デファクト規格等との整合、拡張

3.2 新規ハードウェア関連の標準化課題

オフィス機器のハードウェアは大きく進化しており、標準化の課題も大きく変わってきた。まず最初に取り上げるのは、いわゆるユビキタス化によりオフィス機器も自立したネットワーク機器の一つとなったことから、ユーザインタフェースへの要求が大きく変化したことである。また、情報アクセシビリティの要求も高まっており率先してこれらの要求に応えて標準化を進めていくことが必須になりつつある。次に取り上げたのは、オフィス機器のハードウェアの構成が充実してきており、それに対応する標準化が必要になる具体例として大容量の画像データを扱い始めることを標準化の側面から課題として取り上げた。そして3番目にはオフィス機器に大きな影響のある新規のハードウェアである電子ペーパーについてその普及のための枠組みとして標準化の課題を検討を行った。 多くの課題はハードウェアというより技術的にはソフトウェアと一体化した課題であるが、これをハードウェアの特性に合わせてより効果的で利用しやすいものにすることができるかが標準化の課題として求められている。

@ ユーザインタフェースの標準化課題

事務機は「誰にでも使える機械」の実現のために、業界を通じて操作性への関心が高く標準化も業界では積極的に進められてきた。これまでは各社共通要素となる基本機能が中心の標準化であった。
しかし、オフィス機器のデジタル化、複合機化、ネットワーク接続とともに、パソコンを用いずに直接インターネットを用いてネットワークサービスや遠隔操作を行う新たな要求がでてきた。この場合にもオフィス機器の特徴である優れた操作性が望まれている。また、専門家向けと一般消費者向け双方の利用や、さらに高齢者・障害者にも使いやすいアクセシビリティへの要求など、高度で多様性に富むユーザインタフェースの新たな枠組みが必要となっている。
情報の共有化やペーパーレス化など社会変化に対応した大容量メモリを搭載した機器の文書検索・手順・管理に関しても今後の課題である。
アクセシビリティに関しては、JBMIAでは早くから課題として取り上げ、この分野では先行した活動を行ってきているが、次世代の実質課題を検討すべき時になりつつある。

BMLinkSでは、ネットワークを前提としたサービスの検索ができる仕組みを準備したが、実運用に関しての課題出しを含め検討する必要がある。
ユニバーサルデザイン アクセシビリティ評価法
ユーザビリティ評価法
音声用語、対応の標準化
ヘルプキー
アクセシビリティに関する試験項目の整理と障害機能別設定
ワールドワイドな標準化への対応
次世代ユニバーサルデザイン基準 TBD TBD
複合機&PC操作UI 各機能操作の共通化
用語、ピクト、アイコン
階層表現ガイドライン
アニメーション
カラー調整
本体操作とパソコン操作の共通性(カラー化対応)
ネットワークアクセスへの対応(機器検索、コンテンツ検索)
ネットワーク関連UI プロジェクタ等の他機器との関係
リモート操作
「仮想ユーザインタフェース」
混在機器環境での相互操作を可能にする
異機種間で操作実行環境を相互に提供する(携帯・PDAなどから操作)

A 画像データの蓄積保存の標準化課題

複合機の新規機能として大容量メモリを搭載し、画像データを含む文書蓄積保存機能の充実が検討されている。文書蓄積保存機能はパソコンでは従来から持つものであるが、オフィス機器として簡単な操作で蓄積保存でき、検索することができることが望まれる。その場合、文書管理の視点から、オフィス文書の作成、編集から印刷や保存蓄積、検索までの文書ワークフローの標準化についても考慮し効果的なものである必要がある。また、著作権保護の点からの検討も課題としてあげられる。
文書管理はISO 9000/14000を見るまでもなく重要な経営課題であるが、これまでの複合機は、複写・印刷機能が中心であり、特にそれを意識してこなかった。しかし複写機から複合機となりネットワーク環境でつかわれるとともに、文書入出力、蓄積保存、利用の多様な要求が行われるようになり、複写・印刷機能だけでなく文書処理のワークフローを意識した機器が注目されるようになってきた。
一方、印刷を中心とした作業のワークフローの標準化については、印刷分野(TC130、JIS/AMPAC)、文書画像分野(TC171)などの分野で検討が進められており、データの受け渡しと言う点でオフィスにおけるワークフローとの重複に十分考慮する必要がある。

大容量メモリの搭載 「相互検索」
「操作性」
文書フォーマット
全文検索・キーワード検索
ワークフロー 「文書ワークフロー」
「作業ワークフロー」
AIIM
TC130(印刷)
TC171(文書画像)
IEC TC100(電子ブック)
印刷関連情報 プリンタ関連情報
スキャナ関連情報
デジタルスチルカメラ

B 電子ペーパーの標準化課題

 紙の代替品として電子ペーパーへの期待は高いが,技術的な確立とともに制度面やビジネスモデルの確立が行われることが普及の前提である。しかしハードウェアとしての電子ペーパーは、様々な態様が提案されており技術的に発展途上であり、またビジネスモデルについて標準化の対象とするのは時期尚早であろう。しかし、市場での普及を促進し将来的にも望ましい発展を考えると、コンテンツの流通に関する先行した標準化とともにワークフローが重要な標準化対象であると思われる。 具体的には、コンテンツの作成、編集、利用、表示、保管などのワークフローとコンテンツデータのコネクティビティとアクセシビリティなどである。すなわちデータの検索・交換、表示・印刷、基本的な操作性に関するものがあげられる。
 このワークフローについては、IEC TC100で検討をすすめており、その枠での活動を考慮したものとなろう。そのうちプリンタ出力への課題と操作性については、今後のコンテンツの利用の多様化や、多機種間のコンテンツ流通の課題を解決する規格となる可能性もある。
 こうした新規分野の規格開発と一体となった規格の実装は、新規ビジネス分野の普及促進においては重要な役割を果たすと言われており、フォーラム活動でも重要な役割の一つと認識されている。

ハードウェア 「接続性」
「操作性」
「コンテンツ交換性」
PC、PDA、電子ブックなどとの関連
機能の制約(リンク)
応用、編集
 紙と電子の融合
「印刷仕様」
「編集、追記」
「携帯・デジカメ等の相互利用」
機能表現
制度面 著作権処理
認証の問題
セキュリティ
紙の認証と電子認証の統合
「カードの画像の扱い」

3.3 新規サービスのための標準化課題

 BMLinkSではオフィスサービスとして、6つの基本サービスを規定している。またこれを拡張した、拡張サービスと、さらに、オフィス機器と他の機器、サービスとの連携をはかるためのアプリケーションインタフェース(API)を規定する。  これらのサービスの規定は、オフィス機器が他の情報サービスと組み合わされて新たな市場を形成するためのアプリケーションに共通で基本的な課題を取り扱う。
 オフィス機器はメンテナンスサービスをビジネスモデルの基礎としているものが多い。ネットワーク化されたオフィス機器にとっても、これが基本になっており、さらにネットワークの特質を生かしたサービスが要求されるようになる。その一つが遠隔診断である。

@ BMLinkSの標準化課題

 BMLinkSは、ネットワーク上に存在するオフィス機器の提供するサービスを検索・利用するために6つのサービスを定義している。 これを、他の分野からも利用できるための提案をすすめる

BMLinkSオフィスサービス 基本オフィスサービス
プリントサービス
スキャナサービス
FAXインサービス
FAXアウトサービス
ストレージサービス

A 拡張オフィスサービス

 対象の機器をBMLinkSで想定するオフィス機器以外に広げると、ネットワーク上で相互にサービス提供ができる範囲が大きく広がる可能性が出てくる。一方、利用対象を広げると、オフィスサービスの範囲が上記の6つのサービス以外に必要となる可能性が出てくる。しかしその検討は、業界に閉じたものであるよりも、各種の業界、団体等に開かれたものであるものにすることで、サービスの充実が実現できる。そのような場の提供と標準化の進め方を提案することで、日本発のより充実した標準を発信し、国際的にイニシアティブをとることができる。

BMLinkS拡張 「課金」、
「機器管理」、「故障管理」、
「個人認証管理」
サービス拡張 セキュリティ、著作権、
機種拡張
業界拡張

B 機器のコントロールのための標準化課題

 機器間の接続を行うと外部からそれぞれの機器の制御が必要になってくる。ジョブコントロールとデバイスコントロールであるが、BMLinkSではこれをデファクトスタンダードとして進めており、実装もできており業界標準としては認知されると思われる。

 さらに今後は、クライアントからの直接制御や、異なるベンダー間でのシームレスな通信、オフィス内のシステムの外からそれぞれのオフィス機器を個別にコントロールする必要性が起きてくる。このようなニーズに対応するためには、ハードウェアレベルからアプリケーションレベルに至るまで、その通信と適用業務において幅広い標準化が必要とされる。とりわけ、ハードウェア機器レベルで、機器をユニークに識別できる仕組みが必要であり、これは、すべてのネットワーク対応適用業務のベースとなってくる。
 IEEEでは、この種の固有の機器識別情報として、EUI-48/EUI-64を定めている。しかしながら事務機器の識別情報は、これまで業界標準化の動きはなく、各社各様の対応がされてきた。今後は、異機種間や外部ネットワークからのコントロールの要求に対応する枠組みを作り、業界標準としていく活動が必要であろう。そのためには、将来的なIPV6のネットワークへの展開も視野に入れた、汎用性・拡張性の高いものが望まれる。
 これにより、事務機械業界での統合サービスセンターや、PDA・携帯電話などからの制御も可能となり、事務機器のライフサイクル・環境リサイクル管理やリモートメンテナンス等、応用分野は、おのずと広がっていくことになる。これも「拡張オフィスサービス」と同様、必要とする業界、団体間の協調作業により実現されよう。

OA機器の識別 「機器識別情報」
IPv6
会社コード・事業所コード・製品分類コード・機器単位コード・製造番号など
位置情報、機能情報、性能情報
OA機器の制御 「機能記述」
「性能記述」
「XML名前空間」
携帯、PDAなどからのリモートプリント
TVコントローラのような共通なプロトコル
オブジェクト識別
ベーシックソフト 「機器OS」 オフィス機器用Linux
TRONなど

C ユーザサービスのための標準化課題

 ネットワーク化されたオフィス機器にとって、次の課題はメンテナンスサービスである。LAN/インターネット上で接続された機器の管理と故障診断はすでに実施されているが、これを標準化しベンダ、機器によらずに行うことにより利用者の利便性向上が期待される。さらに第3者によるメンテナンスサービスが実現する。

リモートメンテナンスの標準化課題は、ネットワーク管理や遠隔操作・故障診断のみならず、診断後の対処にかかわるソフトウェアダウンロード方式や、セキュリティの確保手段が重要になってくる。IECではAV機器を対象にリモートダイアグノーシスのミドルウェアの標準化検討を開始した。一方、こうした動きは従来のビジネスモデルを崩しかねないとも考えられ、業界挙げての対応も必要と思われる。

ネットワーク管理 「状態記述」 分散協調作業
「遠隔故障診断」
「遠隔操作」
「機器識別」
「機能記述」「性能記述」「状態記述」  
EUからの提案があり得る
医療機器の実施
情報家電(AV機器)の課題との調整
ソフトウェアダウンロード ソフトバグフィックス、構成変更 デバイスマネジメント
セキュリティ 「権限管理」「アクセス制御」 ファイアウォ−ル、ポート制御、読み出し規則など

3.4 サプライ・環境関連の標準化

消費者保護の観点からの標準化が進んでいるが、業界としてこれを主体的に進めていくことで、よりバランスの良い形の内容とすることが業界にとっては関心事である。一方、環境問題の推進に基づく標準化活動も重要な課題である。 

@ サプライ関連の標準化課題

 EUを中心にサプライ関連の標準化が検討されている。 トナーカートリッジの試験方法の標準化は、ユーザがトナーカートリッジを選択する際の基準となる情報を提供することを目的としており今後、カラートナーカートリッジ,インクジェットなどにも展開していく予定である。

写真画像の耐候性 TC42
「画像の保存性」
耐光性、耐水性、対ガス性、耐熱性、その他 方式を問わない規格、英国公取委
イールドテスト SC28
「トナーカートリッジの寿命試験方法」
モノクロ、カラー
レーザープリンタ、IJプリンタ、昇華型など

A 環境関連の標準化課題

 国際的な環境問題への取組みを背景に、我が国も「環境JISの策定促進のアクションプログラム」に基づいて環境JIS策定活動が計画的に進められている。 JBMIA関係では、「事務機器から排出される化学物質の測定方法」、「電気製品のリユース」(IEC/TC56&JTC1/SC28)、「オーディオ・ビデオ機器及び情報技術機器の消費電力測定方法」などの規格作成が進められている。
 今後は、関連する他団体と協力して、ヨーロッパ・アメリカに先駆けた規格作成への取組みが必要になってくると考えている。まさしく、これが課題とも言える。

リユース JTC1 SC28
IEC TC56
「リユース部品を含む製品性能保証」
「電気製品のリユース」
環境JIS JIS 「事務機器から排出される化学物質の測定方法」
「オーディオ・ビデオ機器及び情報技術機器の消費電力測定方法」
「プリンタのノイズ測定方法」

4. 優先順位の設定

標準化課題を提示し、その中から特に優先すべき課題を委員の間で検討した。また、推進すべきテーマについてアンケートを実施した企業の情報を勘案して、最終的に優先課題を決めた。

4.1 最重点課題

画質関連、ユーザインタフェースは、現在実施体制があり従来より重点的に活動を進めてきた。またアンケートでもほとんどの人が重要度が高いと判断したとされるものを含んでいる。この2件については、5.1、5.2に作業計画を作成し、重点的に推進することとした。
分野 課題 重要度 対応組織
画質関連 画質測定
「モノクロ・カラー画質測定法」
「プリンタ画質測定法」
「光沢均一性測定法」
カラーマネジメント
「プリンタ間の見た目の色」
「プロジェクタとプリンタ間の見た目の色」
「カラープリンティング用語」
イメージマネジメント
「白黒二値画像の2次元的な画像配置」
SC28
カラーマネジメントプロジェクト
ユニバーサルデザイン ユニバーサルデザイン
・アクセシビリティ評価法
・音声用語・対応の標準化
・ヘルプキー
・テンキー代替機能の標準化
次世代ユニバーサルデザイン基準
アクセシビリティプロジェクト
ユーザインタフェース 複合機&PC操作UI
・各機能操作の共通化
・用語、ピクト、アイコン
・階層表現ガイドライン
・アニメーション
・カラー調整
ネットワーク関連UI
・プロジェクタ等の他機器との関係
・リモート操作
・仮想ユーザインタフェース
UIプロジェクト

4.2 重点課題

サプライ、環境については、担当する組織があり重要度が高いことから、その活動について支援することとした。

機器コントロール、遠隔操作・遠隔診断に関しては、現在検討をする組織がなく詳細な計画は困難な状況であるが、外部の活動も活発化しており想定外のユーザ要求があり得るのでそれに対応できるためのスタディが当面の中心である。

BMLinkSについては、委員会活動が積極的に行われておりその活動に従う。

分野 課題 重要度 対応組織
サプライ 「写真画像の保存性」
「トナーカートリッジの寿命試験方法」
TC42、カラーマネジメントプロジェクト
SC28
環境 リユース
「リユース部品を含む製品性能保証」
「電気製品のリユース」
環境JIS
「事務機器から排出される化学物質の測定方法」
「AV機器及びIT機器の消費電力測定方法」
「プリンタのノイズ測定方法」
SC28
JIS化
BMLinkS 「課金」、
「機器管理」
「故障管理」
「個人認証管理」
BMLinkS委員会
機器コントロール OA機器の識別
「機器識別情報」
機器制御
「機能記述」
「性能記述」
「XML名前空間」
「機器OS」
未定
遠隔操作・遠隔診断 ネットワーク管理
「遠隔故障診断」
「遠隔操作」
「機器識別」
「機能記述」「性能記述」「状態記述」
ソフトウェアダウンロード
セキュリティ
「権限管理」
「アクセス制御」
未定

4.3 検討継続課題

以下の課題については、対応組織がなく現在詳細な検討を進めることができないが、関連する標準化の分野との関係が大きいため引き続き検討を進める
分野 課題 重要度 対応組織
画像付加情報 「画像プロファイル」
「画像附加情報プロファイル」
「小容量画像フォーマット」
「ウォーターマーク」
「二次元バーコード」
未定
画像データ蓄積保存 「相互検索」
「操作性」
「文書ワークフロー」
「作業ワークフロー」
未定
電子ペーパー 「接続性」
「操作性」
「コンテンツ交換性」
「編集、追記」
「携帯・デジカメ等の相互利用」
「カードの画像の扱い」
未定

5. 今後の活動と課題

5.1 画質関連

画質関連の課題は、対応組織毎に画質測定、カラーマネジメント、イメージマネジメントの3つに分けて検討をしている。

画質測定

主観評価に相関のある画質属性の体系化と測定法

JTC1/SC28/WG4で作業を進めている。現在はカラーの画質に関する議論に重点が移っており、その中で従来の画質測定法にカラーを追加するためとそれによる枠組みの変更作業と、新たにプリンタ画質、光沢均一性が検討されている。作業は、SC28の国際標準化活動のペースに沿って行われている。
課題 実行組織 計画日
開始日
 終了日
実質上の課題
「モノクロ・カラー画質測定法」 JTC1/SC28/WG4 2004.2
2004.2
 TBD
ISOの改定作業は作業が大変であるにもかかわらずボランティアに頼った活動となっている
「プリンタ画質測定法」 JTC1/SC28/WG4 2004.5
2004.5
 2008.5
日米間の実施項目の調整。場合によっては日米で並行作業となる可能性有
「光沢均一性測定法」 JTC1/SC28/WG4 2004.5
2004.5
 2008.5
米国主導で活動が進められているため、日米で並行作業となる可能性有

カラーマネジメント

機器間、時間軸による色差を小さくする。

カラーマネジメントプロジェクトで扱う、印刷時の現実的なカラープリンタ関連の課題を扱う。見た目の色の問題は、カラーマネジメントから踏み込んで現実的な色の違いを問題にする。また、そのときに用いられる実際のオフィス標準光源についての標準化を優先して扱う。業界間で差のあるカラープリンティング用語とプリントとプロジェクタの間の見た目の色については、上記のめどがつき次第進める。
課題 実行組織 計画日
開始日
 終了日
実質上の課題
「プリンタ間の見た目の色」 カラーマネジメント
プロジェクト
2003.9
2003.9
 2005.12
IP問題の有無確認と有りの場合の対応
「オフィス標準光源」 カラーマネジメント
プロジェクト
CIE/TC1
2004.4
2004.4
 2007.6
予算確保(2004年度は予算の2/3が確保できていない)
「プロジェクタとプリンタ間の見た目の色」 なし TBD
TBD
 TBD
実行組織が特定出来ていない。
「カラー印刷用語」 CIE/TC8, ISO, 他 TBD
TBD
 TBD
多数の標準化組織が個別に活動している。

イメージマネジメント

n:nのスキャナ・プリンタ、プロジェクタ間の画質をそろえる

当面対応組織がないため詳細な検討ができないが、様々なオフィス機器がネットワーク接続された場合であっても高画質を可能とするための課題を検討する。幹事会の課題として継続審議する。
課題 実行組織 計画日
開始日
 終了日
実質上の課題
「スキャナ・プリンタシステム間の画像配置」 なし TBD
TBD
 TBD
実行組織が特定出来ていない。
「プリンタ・プロジェクタ間の画像配置」 なし TBD
TBD
 TBD
実行組織が特定出来ていない。
「白黒二値画像の2次元的な画像配置」 なし TBD
TBD
 TBD
実行組織が特定出来ていない。

5.2 ユーザインタフェース

ユニバーサルデザイン

課題 実行組織 計画日
開始日
 終了日
実質上の課題
ユニバーサルデザインの規格化
アクセシビリティ評価法
アクセシビリティプロジェクト

 2005
JBMS、JIS、ISO化作業の対応
次世代ユニバーサルデザイン基準 アクセシビリティプロジェクト TBD アクセシビリティとユーザビリティ評価法の統合

ユーザインタフェース

課題 実行組織 計画日
開始日
 終了日
実質上の課題
複合機&PC操作UI UIデザインプロジェクト

 2005
本体操作とパソコン操作の共通性
ネットワークアクセスへの対応
ネットワーク関連UI UIデザインプロジェクト TBD

5.3 その他の課題

次の課題は、引き続き活動計画の策定を行う

これらのうち、サプライ、環境とBMLinkSについては担当する組織があり、それらの計画を基本に活動計画を策定する。

機器コントロール、遠隔操作・遠隔診断に関しては、現在検討をする組織がなく詳細な計画は困難な状況であるが、想定外のユーザ要求があり得るのでそれに対応できるためのスタディが当面中心となる。
こうした技術・サービスを実現していくためには、社会ネットワーク環境での機器の識別が基本となり、それを具体的に実現していく環境、特にベーシックソフトウェア・ミドルウェアの状況は、現在、発展途上段階にあると言える。また、これを業界として標準化していくためには、その社会・企業ニーズと、メンテナンス等の運用面での現場に根ざした運用プロセスを仔細に分析・検討していくことが必要となってくる。さらに、事務機器が使用される環境は、オフィスという団体・企業ネットワークの中であることが前提で、昨今のコンピュータウイルス・クラッカー対策としてのファイアウォール・侵入検知システムを越えた運用であることが必要となり、まさに日進月歩の環境であるといわざるをえない。
機器の遠隔操作・診断は、業界標準化面で重要な課題であるが、このような流動的な状況では、標準化の目標と対象を限定することは、非常に難しいのが現状である。したがって、当課題については、ネット家電や有線・無線・携帯通信分野でのアプリケーションの標準化の動向、ネットワーク分野での相互接続実績動向を注視し、現場、特にメンテナンス部門との連携を深めつつ、2004年度は、特定のプロジェクトに偏らず、いつでもアクションがとれる体制を整えていくべく、準備を怠りなくしていきたい。
また、これ以外の課題についても標準化の進展により影響を受けるものがあり得る。

6. まとめ

今年度の活動は、昨年度の標準化戦略を受ける形で具体的にオフィス機器として推進すべき新規分野と課題を示し、標準化ロードマップを作成するというものであった。この活動を通して、改めてオフィス機器の標準化課題が非常に広範にわたっており、そのすべてについて配慮することは困難であり、重点化して進めざるを得ないことがはっきりした。また、他分野の標準化課題と重複する課題も多く、標準化が競争と協調のバランスにたっており、そうした中で迅速に効果的な活動を推進する必要性を痛感した。 一方、法規制などとの関連も増えてきており標準化活動の戦略的重要性も増してきている。オフィス機器の標準化は、こうした様々な活動に影響を受けつつ進めざるを得なくなっている。

ある社が行ったJBMIAの活動に関連しているメンバーのアンケートでも、現実に標準化を推進していくべきテーマとして、大多数の人が「カラー画質測定法」「次世代ユニバーサルデザイン」「トナーカートリッジの寿命試験」を望んでいるという結果が出ている。それについで約半数の人が「総合画質」「ユーザインタフェース」「省エネ測定法」などをあげていた。これらの結果はほぼ予想されたものと一致しており、今回の課題が業界のニーズに沿ったものだということができよう。

オフィス機器の標準化は、ネットワーク化が進み、ユビキタス環境の中で今後ますます企業活動の重要な部分になりつつある。オフィス機器業界の中で国際的に優位を保ち続け、さらに隣接する他業界との協調と競合のなかで優位を保ち続けるためにも、次世代の標準化を視野に入れた活動が重要となっている。オフィス機器の標準化を迅速かつ効果的に進めていくためにも、今回の活動を生かしつつ積極的に推進をしていくことが望まれる。